ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
 桜子を見習えっての。

 いつだってひとりで一生懸命考えて。自分の力で解決しようと頑張っている。そこがいじらしくもあり、心配なところだ。もう少し俺を頼ってくれていいのに。

「万が一のうのうと俺の前に現れたらはっきり言ってやる。二度と顔を見せるなってな」

 あははと八代が笑う。

「まあそうカリカリするな」

 ポンと肩を叩かれた。

「大事な奥さんが心配するぞ?」

 やれやれ。

 それを言われたら俺は、手も足も出ない。



 空を見上げると飛行機雲が見えた。真っ白く、糸を引くように長い雲だ。

 これからもうひとつオペがある。今日は何時に帰れるかわからないが、その代わり明日は休みだ。

「明日は晴れてほしいんだけどな」

「ん? どこか行くのか?」

「桜子と実家に行くんだ」

「お、いよいよか」

 夕べ電話をして、桜子に失礼な態度を取るなら跡は継がないと釘を刺した。

 俺は本気だ。なにがあっても桜子を守り抜く。

 これ以上傷つけたくはない。



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