ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
 帰ったのは十二時過ぎの深夜になっていた。

 ハウスキーパーは基本的に夜七時までの契約で、桜子の体調に問題がなければ帰ってもらっている。

 玄関を開けてもなんの音もしない。

 桜子はもう寝たのか。

 リビングの扉を開けると「お帰りなさい」と、声がした。

 自分の部屋にいたらしい。

「ただいま。まだ起きていたのか」

「眠くなくて」

 そっと抱きしめて頬にキスをすると、桜子はふふっと笑う。

「夕食は?」

「食べてきた。シャワーを浴びてくる」

「うん」

 桜子の額にキスをしてバスルームに向かう。

 今夜、わざわざ小池の話を蒸し返す必要はないだろう。うやむやにする気はないが、話をする機会はいずれあるだろうから。



 北海道に桜子を迎えに行ったとき、彼女は父親の話を聞かせてくれた。

 両親の離婚の原因は父親の不貞だという。正確には疑惑があっただけで、浮気をしていたかどうかはわからないらしい。

 彼女の父は陶芸家だ。

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