ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました




 梅雨は苦手だ。

 なんとなく気持ちが沈んでしまう。

 怖いくらいすべては順調なのに不安になってしまうのはどうしてかな。

 窓辺に立ち灰色の外を見上げながらため息をつくと、窓ガラスが一瞬白く曇った。

「それでは失礼しますね」

 振り返るとハウスキーパーさんが荷物を手に立っていた。

「お疲れさまでした」

 彼女が帰るのは夕方の六時。慎一郎さんが帰るまであと一時間ほどある。

 なにをしようかな。

 カーテンを閉じてとりあえずリクライニングチェアに腰をおろした。

 家事はほとんどハウスキーパーさんがやってくれるから、私がするのは帰ってきた彼に食事を出すくらいだ。

 後片付けは慎一郎さんがする。

『いいよ。俺がやるから』

 びっくりするくらい私になにもさせない彼の勢いに押されて任せてしまうけれど、疲れているはずなのにと思うと、うれしいよりも気持ちが重くなる。

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