ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
 お医者さまも口を開けば無理はしないようにという。

 確かに双子だけれど、世の中にはひとりでがんばっている双子のお母さんもいるのだから私だってと思う反面、体はすぐに辛くなる。

 そして心は不安定だ。

 ひとりになると、いろいろと考えてしまう。

 無事に出産できるのかとか、あの立派な朝井家の嫁としてやっていけるのかななどと、大丈夫と自信を持ったはずがまた不安に襲われて。寄せては返す波のように悩みは尽きない。

 気持ちが落ち着くように音楽をかけて、静かに耳を傾ける。

 今日の昼過ぎ、朝井のお母様が来た。

 入院の準備をすべて、お母様の方で準備をしてくれるという。

『いろいろと失礼をしたお詫びにね』

 初めてここで会ったときに急に料理をするように言ったり、あからさまに反対したことを気にしているようだった。

 もちろん私はまったく気にしていない。あのときの私は慎一郎さんとは付き合ってもいないし、偽者の婚約者だったから。

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