ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
「お父さん。元気でね」
「ああ」
うなずく父の目には涙が滲んでいる。
「今度、信楽に行くからね」
「待ってるよ」
ベビーカーの子どもたちに手を振って、父はタクシーに乗る。
慎一郎さんが私の肩を抱いた。
「よかったな」
「うん」
涙で滲み、走り出したタクシーはやがて見えなくなった。
母の命日に子どもたちを連れてお墓参りに来た私たちは、偶然父と再会した。
父は再婚しておらす、母の命日になるとお花を手向けてくれていたようだ。
もしかすると父は浮気はしていなかったのかもしない。
「さあ、チビたち、帰ろうか」
慎一郎さんがベビーカーにかがみ込んだところで、スマートホンが音を立てた。
病院からだろう。
彼に代わって私が子どもたちをあやしていると、電話を切った彼が「ごめん」と言う。
「気にしないで。もうお墓参りも済んだから帰りましょう」
迷っている彼に「このまま病院に行きましょう」と進めた。