ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
 家に帰り、タクシーを降りて見上げた部屋はなにもないようだったが、消火の水で全てが濡れネズミ。火は免れたものの、まったく住めない状態になっていた。

 一日目は八代の部屋に泊めてもらい、焦ってどこかを借りるよりはとホテル暮らしを勧められた。

 実家も都内にあるが二十三区外と少し遠い。職業柄すぐ病院に駆けつけられる距離にいなければならず、選択は限られる。

 それで仕方なく勤務先の病院から最初は一番近いホテルに部屋を借りたがそこはダメだった。次に近かったホテルがコルヌイエだ。

「話せば同情してさらにサービスがよくなるだろうに」

「言わなくても、すでに十分満足さ」

「ふぅん。そりゃよかった。まあスイートルームに連泊する客なんざそうそういないだろうし、大事にしてくれるだろ」

 まあな。スイートにした理由は広い部屋で気持ちを休めたいからだが、ホテル側からすれば上客になるんだろう。

「しかし、お前が言った通りホテルのスタッフっていうのは、なんでもやってくれるんだな」

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