ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
 ゼミにはやたらと見た目のいい先輩もいて、大半の女性はその先輩を見る目がハートになっていたけれど、その人はコロコロと付き合う相手を変えて、恋人たちはいつも泣いていた。いくら優しくても女性にだらしがない人は絶対にだめ。

 その点、山本先輩は女っ気がまったくないところもよかった。男性には山本先輩のような懐の深さとか心の温かさが大切だと思う。

 かわいらしい新婦は幸せだ。山本先輩なら浮気の心配もないし、温かい家庭を気付けるに違いない。


 女性に奥手だった山本先輩が結婚か。

 それなのに私はといえば──。

「はぁ」

 山本先輩に言った『今は仕事が楽しくて』というのは嘘じゃない。私はコルヌイエが大好きだし、コンシェルジュになるという夢に向かって邁進する毎日は、とても充実している。

 でも、仕事だけというのはちょっと寂しい。

 結婚する幸せなカップルを前にすると、ときどき不安になってくる。私だけ取り残されて、恋も知らぬまま年老いてしまうんじゃないかと。

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