ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
「ねえ桜子。最近ちょっと働きすぎじゃない? 昨日もシフト変わってあげていたでしょ」

「大丈夫。人手不足だし」

 昨日、先輩が体調を崩して休んだ。どうやら風邪らしい。

 私たちのようにお客様と接するお仕事は、体調管理も大切だ。咳がひどくてはフロントに立てない。助け合うのはお互い様だ。

「だけど、今週ずっと休んでないでしょ? 一昨日が夜番なのに引き続きの早番なんて。本当に無理してない?」

「平気よ。疲れているおかげでスコーンと仮眠できたから」

 私たちの仕事は三交代制。早番が早朝六時から午後の二時、遅番が午後の二時から夜の十時、夜番が夜の十時から朝の六時まで。

 夜番の後にそのまま早番はよほどじゃない限りないけれど、今の私はむしろそのくらい忙しくていい。

 ぼんやりする時間があると。余計なことを考えてしまうから。

「ならいいけど、言ってね。桜子が倒れたりしたら、そっちの方が大変なんだから」

「はーい」



 言ってるそばから私はやらかした。

「うわっ」

 振り返りざまに目眩に襲われて、しかも転んだ場所が悪かった。

「イタッ」

「キャー、桜子っ!」



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