ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
 写真数枚に間取りだけじゃ情報が少なすぎる。部屋に大きなこだわりはないつもりだが、本当になんでもいいわけじゃない。

 ものは試しに言うだけ言ってみるか。夕月さんに。

 暇なときていい、とでも言えば問題ないだろう。

 そういえば、昨日から彼女は見ていないが、休みなのか。

 まあいい。とにかくホテルに戻ったら頼んでみよう。

 つらつらと考えながら横を向いたとき、離れた場所にいる女性が目に止まった。

 服装からしてここの患者だ。厚手のカーディガンを羽織っているが、寝間着姿では寒いはず。入院中に風邪を引かれても困る。念のため声をかけようと近づくうち、声が聞こえてきた。

 どうやら電話をしているらしい。

 それならばと立ち去ろうとして、耳に入ってきた声に足を止めた。

「心配しないで、お姉ちゃんは大丈夫だから。優斗は勉強しなさいよ。もうすぐ受験でしょ」

 この声は。

 あらためて、女性の後ろ姿を見る。

 もしかして。

「うんうん。わかった。じゃあ切るね」

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