ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
 詮索するわけじゃないが、随分不規則なお仕事なのねとは思っていた。

 そういえば朝井様はいつも革の手袋をしているけれど、大事な手を守っているのかも。

『ところで夕月さんは弟さんが?』

 実は私の弟、優斗が目指しているのは医者だ。しかも外科医。

 現在、大学受験真っ只中である。

 性格も真面目だし、頭もいいから学力的にはまったく申し分ないと高校の先生には言われていて、母は医者になった弟を見るのを楽しみにしていた。

 二年前、その母は亡くなってしまったけれど……。

 お母さん、見たかっただろうな、優斗の白衣。

 朝井様ほどじゃないまでも、きっと似合うだろう。

「はぁ」

 思わず深いため息をついたときだった。

「夕月さん、病室移りましょうね」

 看護師さんが、ひょっこりと顔を出した。

「あ、はい」

 入院っていってもあと二日なのに落ち着かないものなのね。大きい病院だから仕方がないのかな。

 そう思いながらついて行くと、ちょっと雰囲気が違う扉の前で止まった。

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