ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
結局朝井様に会えたのは、退院した後。コルヌイエのスイートルームだった。
「朝井様、いろいろと申し訳ありませんでした」
「いや、別にいいよ。交換条件と言ってはなんだが、ちょっと入ってくれる?」
本来異性のお客様の部屋には入らない決まりになっているが、今回ばかりは断るわけにもいかない。
話の内容を誰かに聞かれたくはないし、とりあえず中に入ることにした。
マニュアル通り、さりげなさを装いドアストッパーを使って扉は少し開けておく。
女性従業員が男性のお客様の部屋に入るときは用心が必要だ。ストッパーを挟んでおけば、なにかあったても助っ人が部屋に入ってこられる。インカムを装着しているから安心だ。
とはいえ、朝井様にはその心配は必要ないだろうが。
「さあ、どうぞ座って」
「はい」
進められるまま、応接セットのソファーに腰を下ろす。浅く。
「俺の代わりに新居を探してほしいんだ」
予想外の申し出に、思考回路が停止する。