ドＳな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
　髪はきっちりとひとつにまとまっているか。白いブラウスに首に巻いたスカーフ、黒のスーツに糸くずなどがついていないか。

　化粧も気が抜けない。右や左を向いてファンデーションにムラがあったりチークが程よく入っているかも確認した。

　よし、大丈夫。

　最後の仕上げに、頬と口角を上げてにっこりと微笑んだ。

　ホテルで働く者として清潔感を大切にし、口元や目元は微笑みを絶やさない。というのは基本だ。

　レセプショニストとして、コミュニケーション能力のほかに求められるのはホスピタリティ能力。お客様に満足していただけるよう、おもてなしの心を忘れないよう心がけている。

　大学を卒業した私が就職した先は、ごく一般的なビジネスホテルだった。

　ベッドメーキングなどの客室清掃という研修から始まり、ベルスタッフとして経験を積み重ね、フロントスタッフになって二年が経った頃コルヌイエにスカウトされた。

　ここで働き始めてまだ一年。まだまだ新人である。

　フロントに出て間もなく内線電話が鳴った。

< 5 / 273 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop