ドSな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
 お医者様からは当分の間無理はしないよう注意された。治るまでコールセンターのような事務仕事にまわる予定だが、繁忙期ではないのでこれを機に数日はしっかり休むよう上司からも言われている。

「じゃ、よろしく」

 朝井様は言うだけ言って、満足げにニヤリと口角を歪め席を立った。



「失礼します」

 もう。ドSめ。

 閉じた扉を振り返りため息をつく。

 私が困るとわかっていて言ってるの?

 あのうれしそうな顔はそうとしか思えない。

 驚きすぎて特別室の料金はお返ししますと言いそびれてしまった。退院するとき、会計を済ませようと受付に行くと、すでに支払いは済んでいると言われたのだ。

 部屋代だけじゃなく、手術費用を含めてなにもかも。

 明細だけを出してもらい、特別室の料金に絶句したのは言うまでもない。チップと割り切れるような金額じゃなかった。

 お金に余裕はないけれど、ホテルのお客様に借りをつくるわけにはいかないと覚悟を決めたのに。

 もう、どうしよう。

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