ドＳな天才外科医の最愛で身ごもって娶られました
　とぼとぼとスタッフルームに戻ると美江ちゃんがいた。休憩時間らしい。

　美江ちゃんはコーヒーを飲んでいる。

「お疲れー。コーヒー落としたてだからおいしいよ」

「ありがとう」

　コーヒーメーカーにはたっぷりとコーヒーが入っている。空になったときに気づいた人が入れるという習慣になっているのだが、タイミングが悪いと、煮込んだような苦いだけのコーヒーになっている。淹れたてのコーヒーが飲めるのはラッキーだ。

　紙コップにコーヒーを注ぎ入れると、芳しい香りが鼻腔をくすぐった。

「どうかした？」

　椅子に腰を下ろすなり美江ちゃんが聞いてきた。

「困った顔になってるよ？」

「うん。ちょっとね」

「また朝井様になにか頼まれたの？」

　クスッと美江ちゃんが笑う。

「新居を探してほしいって。朝井様に不動産屋を紹介するんじゃなく、私に見繕えって言うのよ」

「ええ？　朝井様がお住まいになる新居を、桜子が？」

　こくりとうなずいた。

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