君はブルー【完】
なんでかは分からない。どうしてそうなったのかも。
でも気付いたらそうだった。気付いた時にはそうだった。じゃあいつなにがきっかけで気付いたのかと聞かれると、正直それすら思い出せない。
「あれ、ハルハルの耳って福耳だー」
「ちょっと、それ私のコンプレックスなんだけど」
家守さんは、私の耳たぶを人差し指ではじきながら、興味深そうに言う。
人より分厚く、大きい耳たぶが嫌だった。
のに、家守さんは気にするそぶりもなく私の耳たぶをざらりとした舌で舐めた。
「ん、ちょっと」
「なにさ」
「いや、なにさじゃなくてさ。ん、それだってば……!」
「かわいい」
私の反応を楽しむように、堪能して、家守さんはいたずらっ子みたいに笑う。
今年30歳になるおっさんとは思えない屈託のない笑顔だ。6歳も年上だとは思えないなちょっと。ただ、私の耳をなめ、肌をなぞる指付きだけは、いやに大人らしくてほんとにいやだ。
って言ったら、それがいいくせにって、言うだろうからムカつく。
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