君はブルー【完】
「ハルハル、誕生日当日もそれつけててくれる?」
「え?」
「明後日。一緒に過ごせないけど、俺のこと思い出してよ」
「……んー」
曖昧に言って、鏡越しの家守さんと目が合った。
その瞳には熱がこもってて、真剣な眼差しに、奥さんがいるはずのこの人にこの世で一番愛されてるような気がしてきてしまう。
ずるい。会えないけど、思い出せだなんて。
「……考えておくね?」
「あ、ずるいなー」
私が思っていたことを家守さんは口にして、ちょっと諦めた感じで笑った。
それから部屋に戻って、どちらからともなく二人でベッドに横たわる。
「……誕生日プレゼント、家守さんの苗字かと思ってたのになー」
「……まだ言うかそれ」
「家守春になるかと思ってたなー」
「ハルハルさー」
「うん」
「もらっても困るもの欲しがっちゃだめよ」
もらっても困るもの。
家守さんの苗字。
家守さんの方を見ると、何か誤魔化すようによしよしと髪の毛を撫でられた。
家守さんの手はあったかい。
明後日、25歳になる。
その瞬間にこの人は私の隣にいない人だ。不倫相手とは誕生日を過ごさない。
家守さんは不倫してるくせに、そういうところ徹底してる。そこがいやなところである。
でも私も家守さんのことをどうこう言える人間ではない。