君はブルー【完】
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「春、誕生日おめでとう」
「えへ、ありがとう優くん」
金曜日、午後7時。25歳になった。誕生日当日は家族、もとい旦那様と過ごす。
優くんが予約してくれたレストランは、前から来たいと思ってた最近話題のイタリアンレストラン。
「……仕事、忙しいのにごめんね」
「なにいってんの。春の誕生日くらい早く切り上げるよ。そのために普段残業してんだから」
「うん、ありがとう」
普段、深夜まで、日付が変わるまでの毎日の残業。忙しい仕事ではあるけど、残業って言って朝帰りする彼のそれが、毎回が毎回そうじゃないことに気付かないほど、バカじゃない。私。
特に水曜日は、必ずと言っていいほどだ。
優くんは平気で嘘をつく。
私も平気なふりして気付かないふりをする。
不意に、テーブルに上向きにして置かれていた優くんのスマホが、着信画面に切り替わった。
相手は見えなかったけれど、優くんはさりげなさを装って画面を手のひらで隠すように持つと、申し訳なさそうな表情を作って、席を立つ。
「……ごめん春、仕事の電話。無理に抜けてきちゃったから、5分だけ、話してきてもいい?」
「……うん、もちろん」
私も無理に笑顔を取り繕って、よい奥さんを演じる。