君はブルー【完】



***



「春、誕生日おめでとう」

「えへ、ありがとう優くん」



金曜日、午後7時。25歳になった。誕生日当日は家族、もとい旦那様と過ごす。


優くんが予約してくれたレストランは、前から来たいと思ってた最近話題のイタリアンレストラン。



「……仕事、忙しいのにごめんね」

「なにいってんの。春の誕生日くらい早く切り上げるよ。そのために普段残業してんだから」

「うん、ありがとう」



普段、深夜まで、日付が変わるまでの毎日の残業。忙しい仕事ではあるけど、残業って言って朝帰りする彼のそれが、毎回が毎回そうじゃないことに気付かないほど、バカじゃない。私。


特に水曜日は、必ずと言っていいほどだ。


優くんは平気で嘘をつく。


私も平気なふりして気付かないふりをする。


不意に、テーブルに上向きにして置かれていた優くんのスマホが、着信画面に切り替わった。


相手は見えなかったけれど、優くんはさりげなさを装って画面を手のひらで隠すように持つと、申し訳なさそうな表情を作って、席を立つ。



「……ごめん春、仕事の電話。無理に抜けてきちゃったから、5分だけ、話してきてもいい?」

「……うん、もちろん」



私も無理に笑顔を取り繕って、よい奥さんを演じる。


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