君はブルー【完】
「はやく家守春になりたいなー」
「……それほんとに思ってる?」
「思ってるよ。家守さんさっさと奥さんに捨てられてくんないかなって」
「こらこら」
そしたら私だけの家守さんになるだろうか。
それとも家守さんには、私以外にも不倫相手がいるのだろうか。
冗談半分だけど、残りの半分は本気で言ってること、家守さんは気付いてるだろうか。
それよりも、家守さんの奥さんは私たちの関係に気付いているのだろうか。家守さんと会うのは平日の夜遅く。水曜日の22時過ぎ。
二人でホテルを取って、深夜までかけて目的のないセックスをする。目的がない? っていう表現は変だろうか。
目的がないっていうのは、なんていうか、愛を確かめるためとか、快楽におぼれて、とか、そのどれでもない気がするから。
私たちがこうなってしまった経緯について、お互いに記憶があやふやだ。気付いたらこうなってたって、私も家守さんも思ってる。誇れることではないですけれども。
「まあ冗談はおいといて、どうする? 誕生日、なにほしい?」
「冗談にされちゃった」
「冗談にしますよそれは。しかも俺は全力でねー全力でやる男だぜー」
「ずっるい大人」
「ハルハルがそれ言う?」
確かに、全力で冗談にされた。ムカつくけど、そういう軽いところに救われてたりもする。
どろっどろの不倫、みたいになってないのは、家守さんが明るいからだ。もちろん誇れることではないのですけれどもね、分かってますけども。