君はブルー【完】
午前2時。
どうせ朝まで帰ってこない奥さん。
わざわざ律義に家に帰らなくったって、ここに泊まって、ここからまっすぐ出勤したらいいのに。会社もその方が近いんだし。
どうせ奥さんには分からないだろうに。そういうの徹底してるのが、家守さんのいやなところである。
服を着るのはめんどうで、でも見送るのに裸のままは心もとないのでベッドの上でしわくちゃになっていたシーツを体に巻き付け、ホテルに入った時の姿のままに戻った家守さんの後をついていく。
「じゃあまた来週」
ドアの前で、家守さんはまた私の頭を撫でて、ちっとも名残惜しそうにはせず、だけど触れるだけのキスはしっかり忘れないで、部屋を出ていった。
ばたん、と閉まったドアの前で、家守さんが帰っていく足音に耳を澄ますけれど何も聞こえない。
一人残されたホテルの一室。ダブルサイズのベッドに一人で寝転がる。これって最高の贅沢かもしんない。
けど、やっぱり少し寂しい。
家守さんと一緒に部屋を出て帰ればよかったかも、と毎回思うけれど、家守さんと抱き合った余韻を残したままの体で家に帰って家族に会うのは、なかなかに居心地が悪いものだ。まあ、こんな深夜に帰って、顔を合わせることもないとは思うけど。