君はブルー【完】
心の中でもう一回言って、呪いをかけた。
「なんだよ。……別れたら、ハルハルは、いえもりはるになるのかよ」
「家守春かー、良い響きだよね。家守さん、苗字くれる気になったの? 誕生日プレゼント?」
「……んー、なしなし、今の発言撤回ー」
「あ、家守さんひどい。期待させといて」
家守さんの奥さんになったら。私が。
どんな夫婦になるんだろう。
今みたいな不倫関係じゃなくて、正式で正当な夫婦。フウフ。
いざ考えてみるとあんまり想像できなくて、首をひねった。
家守さんは缶ビールをサイドテーブルに置くと、いつの間にかほとんどカスしか残っていないポテチを口に流し込んで、また満足そうに笑う。ご満悦って感じ。
それから、不意に私の方を見るから、こっちもじんわりと体が熱くなる。
男のヒトって感じの視線。
家守さんの切れ長の目、最初は睨まれてるみたいと思ったけど、今は笑うと三日月みたいに細くなって、すごく好き。
私にキスする唇は熱くて、吐息はビール臭いけど、きっと私も同じだ。全然不快じゃないのが不思議。
「春」
「……はあい」
今週のしあわせタイム。
開始。の合図。
家守さんは真剣な時だけ、私のことをハルハルってあだ名じゃなく、春って名前で呼ぶ。
ほとんど抱き着くように押し倒されて、首筋にキスされた。