9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
シロツメクサを踏み荒らしながら、エヴァンは立ち上がる。

垣根が見事に整備された庭園をしばらく行くと、やがて喧騒が近づいてきた。

軽やかな管弦楽の音色に、貴族の女たちの作ったような甲高い笑い声。

白いクロスのかかった丸テーブルがそこかしこに設置され、貴族の紳士淑女がティーカップを手に談笑している。

テーブルの上には、マカロンやタルトなどの色鮮やかな菓子が盛られた、銀の三段トレイが置かれていた。

セシリアがいるときは、パーティーで女を侍らし豪遊するのが楽しくて仕方なかった。

彼女がエヴァンに蔑ろにされて傷つく姿を見るのが快感だったのだ。

『あなたに愛されたい』と訴えかける、今にも泣きそうなエメラルドグリーンの瞳を見たかった。

だがセシリアのいない今は、パーティーなど味気ないものにしか思えない。

会場の真ん中で、マーガレットはさっそく、若い男にベタベタと身を寄せている。
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