9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
小さな手首には、彼女が聖女であることを物語る、青い聖杯の痣が浮き出ていた。
ついこの間まで、セシリアのものだった聖女の証だ。
胸に亀裂が走るような感覚がして、エヴァンは唇を食む。
エヴァンの一瞬のその表情に気づいたのか、ミリスが怯えたような顔をした。
それからミリスは、木陰に座ったままのカインに目を向けると、パッと花開くような笑顔になる。
エヴァンのそばを離れ、ててて、とカインの近くに移動するミリス。
「それは、『ランダール物語』ですね。私も、持っています」
「こら、ミリス。エヴァン殿下にもカイン殿下にも失礼ではないか」
フォンターナ侯爵が彼女を咎めようとしたが、「いい。気にするな」とエヴァンがそれを制す。
マイペースな弟は、ミリスの不躾な行動を、まったく気にしていないようだ。
それどころか、あまり人に関心を示さない彼にしては珍しく、瞳を輝かせている。
ついこの間まで、セシリアのものだった聖女の証だ。
胸に亀裂が走るような感覚がして、エヴァンは唇を食む。
エヴァンの一瞬のその表情に気づいたのか、ミリスが怯えたような顔をした。
それからミリスは、木陰に座ったままのカインに目を向けると、パッと花開くような笑顔になる。
エヴァンのそばを離れ、ててて、とカインの近くに移動するミリス。
「それは、『ランダール物語』ですね。私も、持っています」
「こら、ミリス。エヴァン殿下にもカイン殿下にも失礼ではないか」
フォンターナ侯爵が彼女を咎めようとしたが、「いい。気にするな」とエヴァンがそれを制す。
マイペースな弟は、ミリスの不躾な行動を、まったく気にしていないようだ。
それどころか、あまり人に関心を示さない彼にしては珍しく、瞳を輝かせている。