9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
「セシリア様のために全力で頑張ったのよ。少しは褒めてくれてもいいんじゃない? ねえ、セシリア様。セシリア様?」

セシリアはなぜか、暗い表情でうつむいている。

そんな彼女の額に、ジゼルが慌てたように触れた。

「まあ、治癒魔法が効かなかったのかしら? でも大丈夫、魔力熱に効く薬を手に入れてきましたから、すぐにお飲みになられてください」

ジゼルが、手に持った小さなガラス瓶をセシリアに差し出す。

中には、薄桃色の液体が入っていた。

「ジゼル様、何から何までありがとうございます」

「いいえ、気になさらないで。それから、薬はしばらくは毎日欠かさず飲んでくださいね。そして時空魔法は、もう二度と使わないでください。次は確実に命に関わるわ」

「はい、分かりました」

「そして体が完全に回復したら、時空魔法のお話をたくさん私に聞かせて! 時空魔法を使える方とお話ししたいと、ずっと思っていたの。できれば私が使えるようになりたいんだけど、それは無理だから、話を聞くだけで我慢するわ」

「はい、もちろんです」 

そう答えたセシリアの笑みは、どこか覇気がないように感じられたが、生まれて初めての激しい嫉妬心に翻弄されているデズモンドは、それどころではなかった。
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