9度目の人生、聖女を辞めようと思うので敵国皇帝に抱かれます
七章 落第魔導士の策略
セシリアとデズモンドの間に距離が生まれてしばらく経った頃、エンヤード王国から友好条約締結の使者として、間もなく第二王子のカインが到着するという知らせが入った。

カインを乗せた馬車一行が到着するその日、セシリアは薄緑色のオルバンス帝国の伝統衣装に着替え、彼を出迎えるために馬車付き場に向かった。

元エンヤード国民として到着したてのカインを出迎え、それからともに、皇帝に挨拶をしに謁見の間に赴く予定である。

皇太子のデズモンドと、第一皇子のグラハムも、謁見の間でカインに会う算段だ。

馬車付き場には、すでにエンヤード王国から来た馬車の列が到着していた。

中心にある一番大きな三頭立ての馬車には、エンヤード王国の聖杯の紋章が刻まれている。

(懐かしい紋章だわ。エンヤード王国ではあれほど長い間時を過ごしたのに、もう大分前のことみたい)

それほどセシリアの今の生活が、充実しているということなのだろう。

セシリアは、以前デズモンドと帝都を散策した際、本屋で買った本を抱えていた。

本好きのカインにプレゼントするためだ。

カインはいつも、庭園に木陰を見つけては、物語系の本を読みふけっていたから。

セシリアの到着を確認すると、控えていた衛兵が、一番大きな馬車の扉を開く。
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