美しすぎる令嬢は盲目の彼を一途に想う
「ずっとお慕いしておりました。どうか私と一緒にウェンディ国まで来てくださいませんか? 貴方には何の苦労もさせるつもりはありません。貴方の居場所も私が用意します。貴方の幸せを一番近くで見守る権利を、僕に与えてくれませんか?」

 そう言うと、アストロス王子は、優しい笑顔で私を愛おしそうに見つめてきた。
 彼とは、王太子の婚約者として出席した他国交流パーティーで、一度だけ会った事がある。
 その彼が私に告げた言葉の意味――それが分からない程、私も馬鹿じゃない。

「ちょっと待ったぁ!」

 そこへ突然、ロバート殿下の叫び声が割り込んで来た。

「やっぱり無しだ! 先程の婚約破棄は破棄する! カリナ! 君を僕の婚約者とする!」

 なんでよ。さっきから一体なんなのよ?
 せっかく婚約破棄されて喜んでるのに、ぬか喜びさせる気? いい加減にしなさいよ。

 さすがの私もだんだんとイラついてくる。
 どうせ元婚約者が、目の前で他の男性に奪われる姿を見て、急に惜しくなってきたとかいうやつでしょ?

 スーランの事が好きなんじゃなかったの? 隣の彼女を見てみなさいよ。「てめぇふざけんな」って今にも言いそうな物凄い顔で睨まれてるわよ? あなたこのままだと彼女に刺されてしまうわ。

「今更何を言う! いい加減にしろ! さっきのお前の発言で、彼女がどれだけ傷ついたと思っているんだ!」

 アストロス王子も、かなり怒り心頭な様子で反論している。
 婚約破棄を破棄しようとするロバート殿下と、私と婚約すると言い出したアストロス王子の口論は、私を置きざりにしたまま段々とヒートアップしていく。
 その横では「ロバート殿下もアストロス王子も酷いわ!」と泣きわめくスーランとそれを宥める男性陣。って、あなた達はどこから湧いてきたの?

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