10年目の純愛
あれから10年後。

10年後の今年がもうすぐ終わるって思ってたのに・・・
このタイミング?

でも、もしかしたら本当にただの忘年会かもしれないし・・・





12月23日土曜日。

息子は午後から友達と遊びに行き、夫の裕太は朝から買ったばかりのスーツに袖を通して出掛けて行った。

1人になった私は嫌な妄想が頭の中をぐるぐると周り、胸が苦しくてたまらなかった。




私は裕太に電話を掛けた。
何度か発信音を鳴らしたそれは、裕太の声ではなく、「ただいま電話にでれません」というメッセージ音に繋がった。


本当に今日、忘年会があるのだろうか?
もしかしたら、「ナナ」さんと会っているのではないだろうか?

今朝の彼は、10年前と違って私に服装のチェックは頼まなかった。

だけど、買ったばかりのスーツにクリーニングに出してアイロンのきっちりかかった紺のワイシャツ。仕事で普段着ることのない紺色のシャツは私は洗っていない。
しかも普段、私はワイシャツをクリーニングに出したりしないのに、クリーニング店のタグが付いていた。
クローゼットの一番端に隠れるかのようにかけられていたワイシャツ。
ゴミ箱には靴下の袋。靴下まで新品だ。
確認してはいないけれど、きっとパンツも新品なのだろう。



本当に忘年会なのか?


私は今日の忘年会が開かれるというホテルに電話を掛けた。
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