10年目の純愛
『お電話ありがとうございます。ホテルインターNでございます』

電話応対の女性の声に心臓がバクバクと音を立てる。

「すみません。少しお伺いしたいのですが」

『はい』

「今日そちらで行われる予定のAL教育社の忘年会の時間を教えていただけますか?」

『え?AL教育社様の忘年会ですか?』

「はい。時間を忘れてしまって」

『少しお待ちいただけますか?』




そう言うと、クラッシック音楽の保留音が流れた。


調べていただいている間、小さく息を吐く。
電話を持つ手が汗ばんでいる。


『お電話代わりました』
「は、はい」

電話は女性から男性に代わった。


『恐れいりますが、AL教育社の忘年会は、昨日おわっておりますが・・・』
「え?」

『AL教育社の忘年会は、本日ではなく、昨日、12月22日に行われております』
「あ・・・・昨日・・・・」

私はこれ以上話すことができなくなってしまった。
黙っている私に、宴会担当部という男性は心配そうな、申し訳なさそうな声で問うた。


『あの、大丈夫ですか?』

「あ。はい。だ、大丈夫です。すみません」
『いえ・・・申し訳ございません』


何も悪くはない担当者にお詫びを言われ、
「ありがとうございました」
とお礼を言って電話を切った。





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