10年目の純愛
私がお風呂から上がると、裕太はソファに座り、自分で作ったジンバックを飲みながらテレビを見て笑っていた。

はしゃぎ疲れた息子はもう眠っていた。

私はダイニングの椅子に腰かけ、炭酸水を飲んだ。
笑っている裕太に声をかける。

「忘年会、どうだった?」
「え?ああ。疲れたよ。ははははっ」
裕太は私に背を向けたまま、TVを観て笑っている。

「それって昨日の忘年会?それとも金曜日にあった忘年会?」
背中をじっと見つめながら尋ねた。

「・・・・・・」
裕太は何も言わない。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

重い沈黙が流れる。

「・・・携帯・・・見たのか?」

低い声で裕太が聞いた。

「見てないよ」
と答える。
裕太はこちらを振り返り、冷たい目で見ていた。
きっと信じていないだろう。


携帯を見たのは10年前だ。
あの時悟った。

夫の携帯の中には「幸せ」は入っていない

と。


< 17 / 29 >

この作品をシェア

pagetop