10年目の純愛
「あなたはウキウキが隠しきれたなかったわよ」

裕太は不審な目をする。言っていることの意味が分からないのだろう。


「新しいスーツ。靴下。磨かれた靴」

ゆっくりと話す声は震えている。

「クリーニングに出した紺のワイシャツは隠すようにかけられてた。レシートを捨てた財布。ハンカチ一つも選んでた」

胸がぎゅっと掴まれているように痛くて・・・苦しくて・・・。
涙がにじんできて、歯を食いしばる。

泣くもんか・・・

ゆっくりと鼻から息をして、涙を収める。



「バレバレだよ・・・」

裕太は何も言わずにテレビを見ている。
いや。
テレビの方を見ていると言った方がいいだろう。



「裕太の携帯には、何があるの?」
裕太の背中を見つめる。

「裕太の携帯を見たら、あの女の人のことがわかるの?」
裕太は振り返らない。

「昨日会ってた人は・・・ナナさん?」
裕太の背中がびくっと動いた。

「なんでそれ・・・?」
ゆっくりと振り返って、目が合う。


私は目を閉じ、俯いた。
もう、溢れようとする涙を止めることはできなかった。


・・・はい。
・・・ナナさんで、確定・・・。
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