10年目の純愛
ピンポーン
正月からチャイムが鳴る。
「正月から誰だ?」
という裕太を横目に、
「はいはい」
と応対し、すぐに行くから待っていてほしいと伝える。
私はクローゼットからコートを出して着こみ、マフラーを手に取った。
そして引き出しからのし袋を出して、裕太のところに戻る。
お正月らしく赤いのしが付いている。
「名前、書いておいたから。出したら連絡して。それじゃ」
ビールを飲む裕太に手渡す。
「なんだ、コレ。おとしだま?」
と嬉しそうにのし袋を開ける。
「離婚届だよ」
裕太は一瞬固まり、私を見上げた。
「どういうこと?」
「そういうこと」
眉間にしわを寄せる裕太に、にっこりとほほ笑んで玄関に向かう。
ぴゅうっと吹く北風に首をすぼめ、マフラーをしっかり巻く。
「千夏!」
玄関から出てきた裕太に
「ナナさんとお幸せに!!」
そう叫んでタクシーに乗り込んだ。