冬のあしおと
 相馬は決意を新たに、ここからが新しいスタートだと空を仰ぐ。
 いつの間にか太陽が顔を出し、青空が見えるようになっていた。
 春の訪れを予兆するような、綺麗な空だ。今日の空を相馬は忘れないだろう。
「さっき、雪が降ったよね……」
ふと、隣を歩く菜々が言った。


 最後に俺は、菜々達の(やりとり)を聞いた。
「私、雪が大好きで。今日の雪の事、絶対に忘れないと思うの!」
街を去る寸前。次第に明るくなるその声の調子に、思わず菜々を振り返った。菜々が相馬に、今まで見たことのないような最高の笑顔で、そう告げていた。

 別れの寂しさに弱っていた心が、少しずつ前を向く。
 彼女の心にも、春が訪れることを祈って、俺は今度こそ本当の、別れを告げた。

 ――さよなら、大切な人。
 また、来年。


 君の大好きな、雪を降らせにやって来る……。






fin.
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