アラ還でも、恋をしていいですか?
健一兄ちゃんは、たぶん私より十歳は上だったと思う。
いろんなことを知ってるし、おおらかで明るく人懐っこい彼は、老若男女問わず好かれ人気があった。
困った人間は必ず助けるし、呼ばれれば駆けつける。いろんな遊びや本を教えてくれたり、宿題を手伝ってくれたり。探検ごっこや遠足や釣りに磯遊び…たくさん、たくさん思い出があった。
1番好きだったのは、純朴なはにかんだような笑顔。後にお嫁さんなる美代姉ちゃんと一緒にいた時によく見せてた。
(姉ちゃんと言っても実の姉ではなくて、近所の人だったけど)
だから、私が、14のときに健一兄ちゃんと美代姉ちゃんの結婚が決まって…町をあげて祝ってた時に、初めて私は自分の失恋を悟って島を出ることを決めた。集団就職の話は渡りに船で、私は島から逃げるように出たのだ。