アラ還でも、恋をしていいですか?
カシャン、と物音が耳に入り、ハッと我に返った。
(いけない!昔を思い出してぼんやりしていたわ)
今は、朝ごはんの時間。おはぎの仕込みをした後に手早く朝食を作っておいた。
章はいつも朝7時に食べるから、それには間に合ったはずだけど。
流しの前から食卓を見ると、味噌汁が床にこぼれ広がってた上に、夫が青筋立てるほど怒ってる……なぜ?私はいつも通りにやったはずなのに。
「おい、なんだこの味噌汁は!?濃すぎる!おれを、高血圧で死なせたいのか!」
「す、すみません…でも、おだしとお味噌はいつも通りに」
「言い訳をするな!おれが邪魔になって死なせたいんだろ!この煮物も甘すぎる!砂糖をどっさり入れて、糖尿病にでもしたいんだろう!!おれを殺せば相当な遺産が手に入るからな」
「そんな、違います!」
「だが、あいにくだな。おれは今年の健康診断でも異常無しだ。おまえのもくろみ通りにいくと思うなよ!」
ダン!と食卓を叩いた章は、そのままダイニングから出ていき、荒々しく扉を閉めていった。