アラ還でも、恋をしていいですか?
「よかった!心配だったんです。ここのところ暑いですからね。熱中症で脱水症状を起こしたら大変ですし」
そう言った彼は、カバンから一本のペットボトルを取り出し私へ差し出した。
「はい、大したものではありませんけど。汗をかいた時はお茶よりこういうスポーツ飲料の方がおすすめですよ」
「……あ、ありがとう。じゃあお金を……」
「良いですよ!ぼくが勝手にプレゼントしただけですから」
ニコッと笑うその笑顔は太陽よりまぶしくて……。
なんだかまぶたの奥がじんわり熱くなり、慌てて麦わら帽子を深く被り直した。
「だ、大丈夫ですか?もしかして余計な親切の押し売りになっちゃいました??」
途端におろおろと狼狽えだすのも、若い証拠だけれども。そうやって私を純粋に心配してくれることが、たまらなく嬉しかった。
「大丈夫。ありがとう…ただ、嬉しかっただけ」
そう、嬉しかった。
章以外の家族も友達も親戚も知人も…親しい人がいない私には、心配してくれる人はいない。唯一の血縁者の妹には嫌われ疎遠で、友人の雅美は遠い北海道。話せる相手がいない私は、ずっとずっとずっと独りだった。