アラ還でも、恋をしていいですか?
彼は、黙ってそばにいてくれた。
私が泣き止むまで、何も言わず問わず静かに。
「ごめんなさい、迷惑かけちゃったわね。お仕事の最中だったでしょう」
「いえ、大丈夫です。ちょうどお昼休憩なので構いませんよ」
「お昼ごはん…あ!」
そうだ、と思い出した私は、急いでかばんからおはぎのパックを取り出した。
「ごめんなさい。この前のお礼にもならないけど……よかったら召し上がって」
まだ20代の若い男性が食べるかどうかわからないけど、私が作れるお菓子なんておはぎくらいしかなくて。だめなら自分で食べよう、と考えたのだけれども。
「わぁッ!おはぎ!!ありがとうございます。大好きなんです!」
ぱあっと花が咲くような満面の笑みは偽りなんかじゃなくて、本心から喜んで見えた。
「ちょうどお昼ごはんがほしかったんです!ありがたくいただきますね…あ、ここで食べても?」
「え、ええ…」
男性はよいしょ、と平らな岩の上に腰掛けると、かばんから水筒を取り出す。
「あ、よかったら一緒に召しあがりませんか?4つは多いので」
ニコッと笑って言われたら…頷くしか無かった。