アラ還でも、恋をしていいですか?
痛む膝を庇いながら庭に出て、洗濯機に洗濯物を放り込む。水を溜めるために蛇口を開いてから、息をついて勝手口のかまちに腰を下ろした。
今どき、脱水が別の二槽式洗濯機なんて誰も使ってないだろう。25年経っても壊れてないから買い換える必要はない、と夫は許してくれないけれど。
「おい!メシはまだか」
いつの間にか台所の食卓に腰を下ろした章が、ビール缶片手に不機嫌そうに怒鳴りつけてきた。
「どうせおまえは家のことをするしか能がないんだろ!ならせめて、夫が快適に過ごしやすいように先回りして整えるくらいできないのか!!」
「はい。ただ今やります…痛!」
急に立ち上がったせいか、腰と膝に激痛が走って思わずしゃがみ込んだけれど。夫は鼻で笑っただけだった。
「ふん!少しくらいの痛みで大げさだ。おれは痛くても仕事で弱音は見せなかったぞ。甘ったれるな!」
確かに、章はいわゆる“昭和のモーレツ企業戦士”だった。丸一日帰って来なかった時も珍しくない。
でも……。
(私は知ってるのよ、あなたが他の女と一緒にいたことくらい…)
きっと章は、私が何も考えない頭が空っぽな女とでも思ってるんだろう。対等な夫婦でなく、使用人か無料の家政婦程度の認識だろう。