アラ還でも、恋をしていいですか?
「健一兄ちゃん、ありがとう!みんなすごいって言ってたよ!」
お礼のおすそ分けに藤野家を訪れると、健一兄ちゃんは穏やかに微笑んでくれた。
「幸ちゃんが頑張ったからだよ。ぼくは何もしてない…けど、魚はありがたくいただこうかな」
「うん!」
健一兄ちゃんにお返しができて、嬉しかった。でも、健一兄ちゃんは急に押し黙ってしまう。
「……けど、幸ちゃん。そろそろ気をつけた方がいいよ」
「え?」
なんのことだろう?と私は首を捻る。
「幸ちゃんももう中学生だろう?去年までみたいに小学生じゃないんだから……その、体が……ああいったのは良くないよ」
なぜ、健一兄ちゃんは真っ赤になるのだろう?わたしの体?毎日毎日見慣れたものだから、今見返してもまったくなんのことかさっぱり見当がつかない。
「……ぼくを、試してる?」
ぼそっとかすれた声で放たれたつぶやきは、当時の私には理解できなくて。
一瞬、苦悶したような健一兄ちゃんの表情(かお)が、どうしてかずっと頭に焼き付いて離れなかった。
「……どうか、してる。ぼくは……」