アラ還でも、恋をしていいですか?
「すごいですね!ぼくは炊飯器でも時々失敗するのに…このふっくらしたご飯、甘みもあってそれでいて香ばしい。…ガスで炊くなんてすごく手間がかかるのに。梅干しだってうちの母は一度チャレンジしましたが、腐らせて終わりでした。それを毎年なんて…偉いです!!」
「え…そ、そんなに大したことじゃ。褒められる理由なんてないわ…毎日やってる当たり前のことだから」
慌てて否定すると、彼はきょとんとした顔で首を傾げる。
「なぜですか?ぼくは本当にすごいと思いますが…だって、電気炊飯器ならスイッチ一つで炊きあがりますが、ガスで炊くならその間ずっと見てなきゃいけませんよね?火加減だって大切でしょうし…こんなにも手間がかかることを当たり前、なんてことないですよ。梅干しだって…
毎日、こんなご飯を食べられたら幸せですよ!」
その言葉に、ドキリとしてしまう。
(大丈夫、彼は他意はない…ただ私を慰めてくれようとしてるだけ…孫がおばあちゃんを励まそうとしてるの)
「……ありがとう。褒められたなんて初めてだわ。故郷では薪のかまどで炊いていたし、それに比べたら楽なのよ」
「かまど!すごい…一度見たいですね」
若いのに珍しい事を言う子だわ、と口元が綻んだ。
ただ、おにぎりは3つ持参したのだけど。彼は5分とかからず食べ終えてしまった。