アラ還でも、恋をしていいですか?
それだけでなく、ギシギシ言ってたトイレのドアも調整してきちんと鍵が閉まるようにしてくれた。
「あ、ありがとう…」
「ついでですから、これくらいお安いご用です」
ニコッと笑ってそんなことを言われたら…思わず涙ぐみそうになって、慌てて彼にこう言った。
「あ、あの…お昼ごはん、足りないでしょう?お味噌汁とおかず…よかったら召しあがります?」
「え、いいんですか?…でもお家の方にご迷惑じゃ」
「主人はよそで勝手に…食べてきますし、他に家族はいませんから。私だけでは食べ切れなくて」
思わず本音が漏れそうになったけど、彼には関係ないと言い直した。こんな老人のつまらない事情を愚痴るわけにはいかない。聞いたっていい気分のはずないもの。
「そうですか…じゃあ、遠慮なくいただきますね!」
なんとなくだろうけど、薄々事情を察したらしい敬一くんは本当にいい子だ。そこまで付き合う義理はないのに。
うっすら滲んだ涙を見られないように、そっと手で拭った。