アラ還でも、恋をしていいですか?
「まあ、そんなことしなくていいのに」
敬一くんは食べ終えた食器を重ねて流しに運んでくれた……だけでなく、スポンジに洗剤を含ませて洗い出す。びっくりして、慌てて止めにいった。
「良いですよ。ご馳走になったんですから、これくらいさせてください。はい、幸子さんはお料理したんですから。その分休んでて!」
手を出そうとした私を敬一くんはやんわり押し止め、食卓の椅子に座らされてしまった。
「腰とか辛いんでしょう?こういう時は甘えてください。ぼくも慣れてますし、大した作業ではありませんから」
敬一くんの言葉通りに、彼は手慣れた様子でぱっぱと食器洗いを完了させたうえ、ふきんで拭き上げてきちんと食器棚にしまってくれた。
流しの周りも磨いて水分を拭き取り、三角コーナーのゴミまで始末してくれる。そこまで気が利くなんて…と、章と同じ男性であることが信じられないくらいだった。
「あ、ありがとうございます」
「いえ、お世話になりますから……あ、それでですね…ちょっと厚かましいんですが……お願いが」
急に頬を赤らめてもじもじしだすと、敬一くんは年よりも幼く見える。
「お願い……何かしら?」
「あの……これからも、お昼ごはん……いただきたいんです。なので……作っていただいていいですか?お金は払いますから」
そのお願いは、まるっきり青天の霹靂だった。