アラ還でも、恋をしていいですか?


“ぼく、ひとりなんです”

他にご家族がいるのでは?と私が言うと、敬一くんは事情を説明してくれた。

元々家族はお母さん一人だったけれど、お母さんは結婚せず敬一くんを産んで一人で育てたシングルマザー。頑張ってるお母さんを助けたくて、敬一くんは家のお手伝いを進んでしていたとか。

だから、よく気が利くし家事も得意なのね…と感心したけれど。敬一くんが小学生になる辺りからお母さんに恋人ができたのだと言う。

“母が幸せそうなので…ぼくはいらないな、と思いました。彼は初婚だったので、こんな大きなコブ付きいらないな…とうっすら感じていたので、自分からじいちゃん家に行くと言いました”

その家がここから歩いて10分ほどの距離にあると言う。職場からすごく近いわけじゃないけれど、お昼ごはんにいちいち戻るのはとある事情のためとのこと。

“こちらでいただければ時間の節約にもなりますし…もちろん、無理でしたら大丈夫です”

恥ずかしそうにそう頼み込む彼がなんだかいじらしくて……。

“こんな田舎料理でよければ”
なんて、安請け合いをしてしまってた。

“ありがとうございます!助かります!!仕事が忙しくて、何日もまともなご飯食べて無かったんです!お昼ごはんだけはしっかり食べろ!…と職場でも強制的に1時間取らされるので”

嬉しそうに笑う敬一くんの笑顔がまぶしくて…断るなんてできなかった。
< 37 / 60 >

この作品をシェア

pagetop