アラ還でも、恋をしていいですか?
「わぁー、この煮込みハンバーグ、すごくうまいです!」
美味しそうにハンバーグを頬張る敬一くんを見ると、心底作ってよかったと思う。なるべく若い世代が喜ぶ献立にしたら、章はまた食べずに怒って外出したけれど。不思議なことに憂鬱な気分にならなかった。
いいえ…むしろ、敬一くんに食べさせられる、なんて考えてしまってた。
「おかわりして大丈夫よ。主人は嫌いみたいで食べなかったから」
「あー…」
なぜか一瞬、敬一くんは複雑そうな顔をしたけれど。すぐににっこり笑って「ありがとうございます。いただきますね!」と頭を下げた。
「……これ、あーくまきですか?」
食後に出したデザートは古くさいと思ったけれど、冷たく冷やしたそれを敬一くんは喜んだ。
「あくまきのこと?」
「あ、嫌だなあ。ぼく、ずっと“あーくまき”って思ってました」
頬を赤らめた敬一くんは可愛らしいけれど……若いのに、九州のお菓子を知ってるなんて意外。
「たしか、もち米を竹の皮で包んで灰汁で煮るんですよね。端午の節句におばあちゃんがよく作ってくれました…懐かしいなあ。こうして冷やして黒砂糖で食べるのが好きなんですよ」
本当に好物らしくて、まる一本をぺろりと平らげてしまう。お土産に、と数本渡したらとても喜んでくれて、作ってよかったと思う。自分以外食べる人はいなかったから、もう30年ほど作って無かったのだ。