アラ還でも、恋をしていいですか?
「幸子さん、待ってください。ぼくの話を」
「……かわいい彼女じゃない。恋人をやきもきさせてはだめよ。きちんと誤解を解いてあげて」
笑って。本当のおばあちゃんのように、あたたかい見守るような眼差しで、ふたりを祝福しなくては。
それが、私には相応しい立場。
そう、私は敬一くんのおばあちゃん代わりなのだから。それが1番相応しい。
「もう、来ない方がいいわ。お金もお返ししますから……」
「幸子さん!」
突然、何があったのかわからなかった。
ギュッとなにか力強いものに包まれている……と感じた瞬間、鼻をくすぐったのは嗅ぎなれた敬一くんの薫り。
(ああ、そうだ……敬一くんは……深緑の…薫風と同じ薫りがするんだ……)
ぼんやりとした頭に、絹を裂くような悲鳴が響いた。
「け、敬一……あなた、なにをしてるの!?彼女の前で……正気なの?」
「彼女……?この際だから言わせてもらうけど、静香。ぼくは今まで君を異性として好きだった事は一度もない」
きっぱりと言い切った敬一くんの言葉は力強く、少しの迷いもブレもない清々しさだった。
「ぼくの行く末を案じるじいちゃんたちを安心させたくて黙ってたけど。それでも一度も肯定したことはない。誤解させたなら謝る……けど、ぼくの好きな人はもう別にいるから。期待はするな」
「な、なによ…!そのばあちゃんのこと……ただ新しい店にスカウトするために通ってただけでしょう!なんでそんなに庇うのよ!!」