アラ還でも、恋をしていいですか?

静香さんが教えてくれた話に、納得できる点はいくつもあった。

敬一くんは、最初から親切すぎた。
やたら私のご飯を食べたがったし、大袈裟にほめてくれた。
穿った見方かもしれないけれども、やっぱり不自然に感じてた。20代の若者が還暦過ぎの老女に親切にするには、善意というにはあまりに出来すぎていて。幾ら世間知らずの私でも、何かしら事情はあると感じてた。

「敬一くん……料理屋は別に私でなくてもいいわ。プロに任せて……あんな田舎料理……誰も食べたがらないわ」
「そうよ!敬一、考えてみなさいよ。どう考えてもこんなおばあちゃんなんて無理よ。私が推薦した小夜さんが相応しいわ!何より若くて華があるもの」

こんな時にも夫が熱を上げる未亡人の名前が出るなんて……と、複雑な気持ちでいると。敬一くんは「違う!」と叫んだ。

「ぼくが……幸子さんのご飯をずっと食べたいからなんだ!!興味があって近づいたのは否定しない…でも、今は。ぼくが…ぼく自身が幸子さんに逢いたいから来てる!お店はついでの話で……若いとか年とか……関係ない!!」

敬一くんは、怒鳴るように声を張り上げた。

「笑われてもいい!ぼくは、自分に正直に居たい。幸子さん、ぼくは確かに新しいお店で料理を作ってほしいです。でも、ぼくのためだけに…でも作ってほしいって思います。こんな思いは迷惑で、わがままってわかってる。でも…大切なんです!」
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