アラ還でも、恋をしていいですか?
「ふん、たかが主任の分際で。A社の取締役まで務めたおれによくそんな生意気な口を叩くものだ」
案の定、章は敬一くんを見下した。
お客がいるにも関わらず、両腕を組みふんぞり返る。この中で自分自身が一番だ、と思ったんだろう。
「なによ…!敬一がどれだけ努力してN大を卒業しS社に入ったか知らないくせに。仕事だってどれだけ頑張ったか…勝手なこと言わないで!」
黙っていられなかったのか、静香さんが身を乗り出して敬一くんを援護する。あれだけきっぱりフラレたのに…彼女は心底敬一くんが好きなんだ…といじらしさに、胸が痛くなる。
けれども、空気を読めない章は静香さんを認めた刹那、意味不明な事を言い出した。
「なんだい、お嬢さん。もしかしておれに会いにきたのか…?」
「はぁ?」
急ににこやかになった章に、静香さんが明らかに嫌な顔をして体を引いたのに。章はぼろぼろの歯を見せながらニコッと笑った。