アラ還でも、恋をしていいですか?
「1号、不貞行為。過去44年で、少なくとも128人の女性と関係されてますね、章さんは」
ザッ、と葛西さんは古いものから新しいものまで、写真入りの調査結果の紙を広げた。
「げ…キモい」
静香さんの呟きには、同意するしかない。
「2号、悪意の遺棄。あなたは幸子さんに十分な生活費を渡さなかった…そして、家のことは一切せず…若い頃には半年近く帰らない時さえあったそうですね」
「……」
動かぬ証拠を積み上がる度に、章は無口になっていく。
「そして、5号。その他婚姻を継続し難い重大な理由…あなたは幸子さんへ先ほどおっしゃったように、モラハラやパワハラを繰り返し己へ隷属させていた…違いますか?」
敬一くんが私が綿々と書き綴ってきた日記を広げ、章へ突きつけた。
「よく、こんな仕打ちができますね?あなたが妻にほしかったのは、世間体と女遊びの隠れ蓑のため…愛して妻にしたわけではない。なら…」
敬一くんはにっこり笑うけど。その笑顔は今までになく凄みがあった。
「ぼくに、幸子さんをください。ぼくなら必ず幸せにしてみせます」
「な…貴様、正気か!こんなババアを」
「幸子さんのような素晴らしい女性をババアと呼び捨てる…その無礼さは、これに免じましょう」
スッ、と敬一くんが差し出したのは、離婚届だった。