The Very Mary X'mas 《『出逢いがしらに恋をして』 番外編その2》
 唇を離すと彼は呟いた。
「さっきからずっと(ついば)みたかった。その可愛い唇を」

 わたしは体ごと向きなおって、その胸に顔を埋めた。

「……ひより」
 声につられて見上げるとすぐ、また唇が重なってきて。

 少しアルコールの香りのする甘いキス。
 でも、今度のはくらくらと酔わされてしまうような、濃厚な。

 もうずっとこうしていたいぐらい、幸せで。

 向こうから車のライトが近づいてきたのが惜しいと思ったぐらいだった。

***

 さすがにイブ。
 道はかなり混んでいた。
 渋滞に引っかかった時間も含めて、タクシーに30分ほど乗って、着いたところは1年前にできたベイエリアにある超人気ホテルだった。

「ここ? よく取れましたね。イブなのに」
「ああ、ひよりと付き合いはじめてすぐ、予約入れたんだ。でも、そのときでさえ、あと2室しかないって言われてさ」

 ってことは……
 あのときにはもう、クリスマスまで付き合おうって思っててくれたんだ。

 じわじわっと胸の奥が温かくなっていく。
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