捨てられ聖女サアラは第二の人生を謳歌する~幼女になってしまった私がチートな薬師になるまで~
「彼女は不思議な力を持つとされる精霊に愛された人でした。そして精霊から力を与えられた彼女もまた、不思議な力を使うことができたのです」

「魔法です!」

「ええ。彼女の魔法は瘴気を払い、この地を人の住めるものへと変えました。その功績を称え、彼女は聖女と崇(あが)められるようになったのです」

 瘴気の危機が去るとアルダントでは魔力を秘めた鉱石が発掘されるようになった。それは魔法石と呼ばれ、人が体内に持つ魔力と反応することで奇跡を生み出す。この魔法石を加工することで人々の生活はずっと豊かになった。口を捻れば水が流れ、手をかざすだけで窯に火が灯る。
 いつの頃からかアルダントに生まれる者はみな、少なからず魔力を持つようになった。しかしそれは微々たるもので、実際に魔法を形にできる人は少ない。

「いつかサアラも聖女さまのように魔法をつかえますか?」

「それは魔法石がなくても魔法が使いたいということですか?」

「聖女さまはまほーせきがなくても魔法をつかえました。おばあさまも石がなくても風の魔法がつかえます。聖女さまみたいに! おばあさまはでんせつの聖女さまの血をついでいるからですか?」

「確かに、わたくしの家系に優れた魔法の使い手が多いのはそのおかげでしょう。とはいえ聖女様ほどの力を持つ者が現れたことはありませんが」

「やっぱり聖女さまはすごい人です」

「そうですね。今の私たちがあるのは聖女様のおかげです。かつて聖女の導きによって精霊たちが地上に暮らす人を愛し、ともに生きることを望んだからこそ、人は奇跡の力を扱うことが許されている。わたくしたちの生活は精霊たちによって支えられているのです」

 精霊たちへの感謝を忘れてはいけないというのは子供の頃から聞かされて育つ話だ。
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