捨てられ聖女サアラは第二の人生を謳歌する~幼女になってしまった私がチートな薬師になるまで~
「でも聖女さま、いなくなってしまいました。聖女さまはどこへいったのでしょう?」

「一説では今のノースハイムに向かったとされていますね」

「マニーレ領のとなりです! マニーレも、元はノースハイムの一部だったのですよね?」

 得意気に答えれば、よく勉強していますねと褒められたサアラは満足そうだ。

「聖女様はノースハイムで静かに過ごされたとも言われています。寂しくないよう、彼女の傍には常に精霊たちの姿がありました。精霊たちは聖女様を喜ばせようと彼女が愛した動物の姿を真似ることにしたのです。精霊たちは今も動物の姿を借りてアルダントを見守っているそうよ」

「ではノースハイムにはたくさんの精霊がいるのですね。サアラはまだあえたことがないのですが、おばあさまは精霊とおはなしをしたことがありますか?」

「残念ですがわたくしもお会いしたことはありません。きっと貴女のお父様も。精霊たちはとても気難しい存在で、聖女様にしか心を開かないといわれています。でもサアラなら……」

 きょとんと目を丸くするサアラにソニアは穏やかな口調で続けた。

「わたくしの孫なのですから、貴女にも聖女様の血は流れているのですよ」

「そうでした!」

「サアラがいい子にしていたら会えるかもしれませんね」

「サアラいい子にします! できます!」

「なら、いい子は早く寝ないといけませんね」

 いい子の条件をほのめかすとサアラは布団を引き上げ眠る準備が完璧であることをアピールする。素直な反応にたまらずソニアは愛しそうに目を細めた。大切な存在だからこそ、こうして傍にいられるうちに伝えておきたいことがたくさんある。

「ねえサアラ。もしもこの先、貴女に特別な力が現れたとしたら、その時は……」

 不自然に言葉を途切れさせたソニアにサアラは不安を抱く。その表情が複雑そうに揺れたのは気のせいだろうか。しかし瞬きをする間に笑顔へと変わっていたので見間違いだったのかもしれない。
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