分岐する未来
分岐する未来
些細なきっかけ
夜寝る前に、突然彼の声が聞きたくなって電話をしたら、不機嫌な声で「何か用?」と言われた。
用がなきゃ電話しちゃだめなの? 声が聞きたかったじゃだめなの? 呟いて電話を切ると、すぐに彼からの折り返しがあったけれど、無視をした。涙で滲んだ声を聞かれたくなかったからだ。
これっぽっちの些細なことで、どんどん未来が変わっていく。変わってしまう。それを蝶の羽ばたきに例えたりするけれど、いまいち実感がなかった。今日までは。
突然彼の声が聞きたくなった。いつもなら我慢するけれど、今日はできなかった。電話をした。彼が不機嫌だった。不機嫌の理由を聞かなかった。電話を切った。甘えた声で「声が聞きたかったの」と言えなかった。折り返しの電話を無視した。どれもこれも、ほんの些細なことだ。
でもこれが、わたしの選択の結果だ。そしてこの後の選択も、わたし次第なのだ。
頭の中で、何かが弾けたような音がした。
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